今回は力とモーメントについて見ていきましょう。力やモーメントは高校の物理で習った方も多いと思いますが、材料力学(他の四力でもそうですが)において重要なテーマなのでこの機会にぜひ復習しておきましょう。
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力の3要素
力学における力とは『力の大きさ』と『力の作用点』、『力の向き(作用方向)』の3つの要素で決まります。そして、力は方向と大きさを持っているので『ベクトル』として扱うことが出来ます。

力の合成
下図のような点Oに2つの力\(\vec{F}_1\)と\(\vec{F}_2\)が作用するとき、ベクトルの平行四辺形の定理から、2つの力と同じ『合力』である\(\vec{F}\)ができます。また、この力\(\vec{F}\)を\(\vec{F}_1\)と\(\vec{F}_2\)に分解することもできます。このとき、力\(\vec{F}_1\)と\(\vec{F}_2\)は\(\vec{F}\)の『分力』と言います。以上の関係は次のように表すことが出来ます。
\[\vec{F}=\vec{F}_1+\vec{F}_2\]

力の分解
力を扱うときには下図に示すようなO-xy直角座標を用いて力をx,y方向の成分\(\vec{F}_x\)と\(\vec{F}_y\)に分解して、その大きさを\(F_x\),\(F_y\)と表すことが多いです。\(F\)と\(F_x\),\(F_y\)をそれぞれ\(\vec{F}\)と\(\vec{F}_x\),\(\vec{F}_y\)の大きさ、\(\theta\)を\(\vec{F}\)がx軸となす角とすると\(F\)と\(F_x\),\(F_y\)の関係は次のように表すことが出来ます。
\[F_x=F\cos\theta,F_y=F\sin\theta\]
\[F=\sqrt{F^2_x+F^2_y}=\left|\vec{F}\right|\]
\[\theta=\tan^{-1}\frac{ F_y }{ F_x }\]

力のモーメント
下図のような、ナットにスパナを差し込んだ状態を考える。スパナの端点Aに力\(\vec{F}\)を作用させるとナットが回転する。このような力の作用を『力のモーメント』と言います。ナットの中心点Oを通り、今見ている図に対して垂直な線を考えると、このナットは垂直線を中心として回転します。図を見るとスパナの腕OAは力の作用線に下した垂線になっています。この長さ\(d\)を『モーメントの腕の長さ』と言います。モーメントの大きさ\(M\)は\(d\)と力の大きさ\(F\)の積として次のような式で表されます。
\[M=dF\]

練習問題
問題
下図に示すような2つの力\(\vec{F_1},\vec{F_2}\)の合力\(\vec{F}\)の力の大きさと方向を求めなさい。ここで、力\(\vec{F_1}\)の大きさは200[N],力\(\vec{F_2}\)の大きさは100[N]とする。

解答と解説
\(\vec{F_1},\vec{F_2}\)をx,y方向成分に分解すると
\[F_{1x}=200\cos60°=100[N],F_{1y}=200\sin60°=173.2[N]\]
\[F_{2x}=200\cos0°=100[N],F_{2y}=200\sin0°=0[N]\]
合力\(\vec{F}\)のx,y方向成分を\(\vec{F_x},\vec{F_y}\)とすると
\[F_x=F_{1x}+F_{2x},F_y=F_{1y}+F_{2y}\]
なので数値を代入すると
\[F_x=100+100=200[N]\]
\[F_y=173.2+0=173.2[N]\]
よって、合力の大きさと方向(x軸とのなす角\(\theta\))は
\[F=\sqrt{F^2_x+F^2_y}=\sqrt{200^2+173.2^2}=264.6[N]\]
\[\theta=\tan^{-1}\frac{ F_y }{ F_x }=\tan^{-1}\frac{ 173.2}{ 200 }=40.9[°]\]
まとめ
力とモーメントは材料力学において非常に重要です。他の4力においても基礎となるものなので、しっかりと理解を深めていってくださいね。次回は「力のつりあい」について解説していきます。ここまで見ていただき、ありがとうございました!

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